おじさんだって読む本

アーモンド入りチョコレートのワルツ (角川文庫)

アーモンド入りチョコレートのワルツ (角川文庫)

 私のような50過ぎのオッサンで、こういった題名の本には、抵抗感を抱く方が普通かも知れぬ。森の著作は「永遠の出口」にいたく感心したので、その後四冊ほど読んでみた。その中で一番恥ずかしいのが、本書の題名である(もちろん購入することがの意)。
 一読、中学生という時代が人の一生にとって、どういう時期なのかについて、深く洞察している作者の才能に感心した次第。小学生時代とは、ただただ楽しかったり、疲れたりの時代。また逆に高校生ともなると、ある程度自我のあり方が決定されている。中学生の時は「自分が何者なのか」について、あるいは、そういう問いを言語化できぬもどかしさを抱えている時だったような気がする。本書の効用は、はるか昔、自分がどのような自分だったのかに、思いをいたすことか。
 中学生の時、40年後の自分を想像すらできなかったであろう。また逆に、40年後の今日、中学生の自分の心理についても、推しはかれないのである。

「あたしたちが大人になったらさ、好きなもんを好きなように好きなだけ作って、そんで毎日を木曜日みたいに、きらきらさせてやろうな。そんで、そんで…」
「それで?」
「そんで絶対に、終わらせないんだ」
「…うん」
「約束だぞ」
「うんっ」
約束だぞ、と言った君絵の声を、わたしは今でもおぼえている。
泣きだす寸前で笑うことに決めた子供みたいな、そんな必死な声だった。