悪書(漫画)追放運動から40年

大阪ハムレット (1) (ACTION COMICS)

大阪ハムレット (1) (ACTION COMICS)

 こういう作品を読み終え、本当に日本の漫画ははるばる遠くへ来たもんだという感慨にとらわれる。「手塚治虫という豊かな水脈」に連なる日本の漫画家たちの現在を漫画を好まない人々(意外と多い)に薦めたい。以前取り上げた、こうの史代の「夕凪の街 桜の国」などとともに、この連作短編集は、この先の漫画の可能性を示したものでもあると思う。
 例えば昨今の「いじめ」現象における様々な言説がある。朝日新聞の社説に何事かの考えを探ろうとする人がおられたら、その前に、この短編集の中の性同一障害を自己のクラスで告白した男子生徒をめぐる人々の物語をまず読まれよ。きっと「少年アシベ」の描線のままで描かれた物語に驚かれるであろう。少なくとも私は驚きかつ深く共感したものである。