怪奇小説の秀作

花まんま

花まんま

 これは悪口じゃないのだけど、文章に推敲を重ねるだの彫琢するだの人じゃない。それが結果として連作の舞台である大阪の下町とりわけ袋小路のようなごった煮の町の話にふさわしい。物悲しい怪奇小説を救っているのが、この作者の持ち味かと…。
 表題作「花まんま」もいいけど、私は小さき者、弱き者に寄り添う記憶を綴った「トカビの夜」と爆笑もの「摩訶不思議」が心に残りました。とりわけ「摩訶不思議」など、初期山田洋次のメガホン、ハナ肇主演の一連のコメディのようなブラックでシュールな映画になったらいいかなあとも思いましたが。