ぼくの好きな映画のひとつ「アウトサイダーズ」をめぐるアメリカ社会ひいては遅れること20年の日本社会の若者の抱える矛盾と問題について、示唆に富んだ書です。

教養のもつ実質的な意味は、価値の多様化が言われ始めた七〇年代の初頭に、すでに大きく変質していたと思いますが、あのときいったん退却戦を演じたオタクという奇特な例外を除いて、日本の知識層は、長い間、教養主義の崩壊に面と向かい合ってきませんでした。

この人「週刊ブックレビュー」のインタビューで初めて知った人だけど、難しい言葉を使わずに、丁寧に自分の考えを述べるという当たり前だけど、今日びのテレビに登場する知識人らしからぬ態度に感心して読んでみたわけです。世代も同世代として、頷く部分が多い本でした。