奇跡の物語

優しい子よ

優しい子よ

 結局、年末年始の休暇には、この一冊を読んだのみだった。町の図書館で借りたのだが、じっくりと読むことが出来た。
 私小説としてあるが、最初の「優しい子よ」から事実が淡々と述べられる。胸が詰まるような話であるのに淡々とした叙述で、余計に哀切なものに感じられる。
 NHKラジオ「私の本棚」という朗読番組で知ったのだ。榎木孝明の朗読が素晴らしかった。本書の妻は、女流棋士高橋和であるが、そのインタビュー番組も同じ時間帯のNHKで聴いた。幼少時に交通事故にあった高橋の凄まじい内容であった。
 奇跡のような優しい個性の男の子の物語から、伝説的なTVディレクターの死、自分の子供の誕生までの連作短編が、一つの物語となっていく。
 装丁の良さ。読みやすさ。妊娠中の方などの贈り物に素晴らしいかと。勿論おっさんにもオススメしたい。