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- 作者: 上原善広
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2005/06/16
- メディア: 新書
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足が不自由なために、学校にも行けなかったジテ。サルキ差別と障害のために、彼は町で洋服屋を開くといささやかな夢さえ「無理」だと悟っている。
わたしはそんな彼に「サルキであることに誇りをもて」と言ったのだが、このような現状でいったい、どう彼が誇りをもてるというのだろうか。わたしも、地面を見ながら歩いた。
ジテがぽつりと言った。
「家に来てくれて、本当はすごく嬉しかった。今まで家に来てくれた人もいなかったし、一緒に牛肉食べてくれる人なんて、一人もいなかったから」
わたしは「そうか」と答えるのが精一杯だった。
それから二年後、再びエクハテのゴビンダ家を訪ねた。しかし、もうそこにジテの姿はなかった。家族の話によると、ポカラの町に出て行ったきり、もう半年も帰ってこないのだという。
足さえ不自由でなかったら、自分もマオイスト(毛沢東主義の武装組織)のゲリラ部隊に入って戦いたいと言っていたジテ。
その後、再び聞いたところでは、あの不自由な足を引きずって、父と同じように、インドヘ出稼ぎに行ったのだという。