被差別の食卓 (新潮新書)

被差別の食卓 (新潮新書)

一読、人間てえ存在はつくづく差別を「してしまう」存在だなあと感じたね。善悪、真善美こえて差別をするから人間なんだというような逆説的な感想を持った。ネパールのカースト制度の件、しょうがねえなあ…。

足が不自由なために、学校にも行けなかったジテ。サルキ差別と障害のために、彼は町で洋服屋を開くといささやかな夢さえ「無理」だと悟っている。
 わたしはそんな彼に「サルキであることに誇りをもて」と言ったのだが、このような現状でいったい、どう彼が誇りをもてるというのだろうか。わたしも、地面を見ながら歩いた。
 ジテがぽつりと言った。
 「家に来てくれて、本当はすごく嬉しかった。今まで家に来てくれた人もいなかったし、一緒に牛肉食べてくれる人なんて、一人もいなかったから」
 わたしは「そうか」と答えるのが精一杯だった。
 それから二年後、再びエクハテのゴビンダ家を訪ねた。しかし、もうそこにジテの姿はなかった。家族の話によると、ポカラの町に出て行ったきり、もう半年も帰ってこないのだという。
 足さえ不自由でなかったら、自分もマオイスト毛沢東主義武装組織)のゲリラ部隊に入って戦いたいと言っていたジテ。
 その後、再び聞いたところでは、あの不自由な足を引きずって、父と同じように、インドヘ出稼ぎに行ったのだという。