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- 作者: 横山秀夫
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2004/01/16
- メディア: 単行本
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「自伝」
自伝を残そうなどと考える人間の気持ちが知れなかった。ただの不幸か、ただの幸福か、そんなものをこの世に残すことに何の意味があるだろう。平凡な人生。特別な人生。そんなことを真面目に考えてみたところで、何がどうなるというのか。
「口癖」
後姿は淡々としていた。勝ちも、負けも、何もなかった。ゆき江はそっと涙を拭った。人生に、勝てる人間などいるはずがないではないか―。
「午前五時の侵入者」
立原が真に憎しみを覚えたのは、一見誠実で優しい人間達だった。視界に入った時だけ、哀れみと慈しみの眼差しを向け、誠実な言葉を掛け、気まぐれに優しさを分け与え、そうして少年の心に灯をともしておいて、その灯を無表情に吹き消す人間たちだった。