あんたがそれを言うのか

 書名を見てもわかるように、新左翼の運動と思想を過去のものとして概括したもの。まあ、あんたがそれを言うのかと思わないでもないが。内容はよく整理されている。
 例えばイギリスなんかでは、家自体が代々トロツキストなんていうこともあると聞く。日本の急進的な社会運動は、内ゲバ連合赤軍、爆弾などで、全てを無に帰した空虚がある。本書の中にも、

西ヨーロッパにおいては、ユーロコミュニズムが色あせていく八〇年代初頭から新左翼の活動家たちが環境運動に身を投じ、ドイツのバイエルン地方政府の執政権を掌握するなど、早い段階で赤旗が緑の旗に変わっていました。西ヨーロッパ新左翼の活動をつぶさにみていた重信房子によると、西欧においては旧来の共同体(日本でいえば村社会)が現存し、伝統的に社会民主主義的な基盤があったといいます。そこから共産主義者だった若者が共同体に立ち返り、緑(環境派)に移行して活動を再開するのは、それほど難しいことではなかったのでしょう。そこでは社会民主主義と緑が一体化しているのです。このあたりのことは、日本社会における近代の歴史の浅さ、わけても左翼思想の歴史の浅さを感じないわけにはいきません。