良書です。

泪の旅人―ならず者出獄後記

泪の旅人―ならず者出獄後記

 滝田修も、すっかり過去の人になった。「パルチザン前史」を大学の大教室で見たのは、もう何年前だろうか。
 著者を引っ掛けたプロヴァカートル(古いですな)菊井は、名古屋の広告代理店でよろしくやってると聞く。同じく引っ掛かった川本三郎も旅人となって、著述を重ねた。人生色々…。
 著者のアジア放浪の旅における人々との出会いが美しい。黒猫「つよし」との逃亡の日々の思い出が涙を誘う。
 そして、その昔、朝霞事件で、逮捕拘留された著者のもとに、ある人物から差し入れが届いた。当時のお金で五万円の大金と巻紙の手紙に、
  これはこれでよかったのだ
  何も心配することはない
  大丈夫だ 頑張りなさい
 
とあったとある。「原爆の図」の作者、丸木位里丸木俊夫妻である。人生色々、人間も色々。