中年ユーモア文学

団塊ひとりぼっち (文春新書)

団塊ひとりぼっち (文春新書)

中年ユーモア文学の傑作といっていい。ちょっと悲憤慷慨調というか旧制高校的だった「安田講堂1968-1969」とあわせて読むと、そのユルさ加減も味わえる。
括弧書きの自分ツッコミ、注釈の面白さなど、腹を抱えて笑える箇所が随所にある。真面目な顔してするギャクほど笑えるでしょ。山口姓から思い出す山口瞳的ユーモア文学の継承者といえる。仲が良いらしいけど、文中よく引き合いに出される関川夏央呉智英と合わせてシングル中年のトリオ漫才の趣がある。足立倫行っていうオヤジはちょっと嫌いらしい。中年の方オススメ!
以下、例えば

ご承知のように、人間というものは文化の中で年をとる。だから、一つの安定した文化のなかで安定した人生を送らないとうまく年をとることができない。

とした本文の注は…

注① たとえば「ロス疑惑」の三浦和義「元被告」(1947年生まれ)。このピカレスク団塊の場合は、まず思春期における少年院体験が、成熟と社会適応を困難にさせたといわれている。その結果ロス疑惑が生じ、容疑者・被告として収監されること十余年。おそらく、この体験がさらに文化的な安定を阻害することになったのだろう。無罪放免後は、獄中で身につけた法律知識を生かして「法律コンサルタント」(兼映画プロデューサー)の看板を掲げているが、最近は髪もレスラーのような金髪。まことに年齢不詳の「ちょい不良(ワル)」、いや「大不良」オヤジの道をひた走っている。

てな具合。